共訳出版への参加で「原文に忠実に」を再認識 篠田知佐子さん

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○ 原文に忠実に

バベル翻訳大学院(USA)の修了生として翻訳するにあたり一番にこだわっていきたいポイントは「原文に忠実に」ということです。海外の文章を翻訳する意義は、内容そのものが面白いというケースのほかに、外国人独特のユニークな語り口や切り口が日本人読者にとって新たな世界を開くというケースも考えられます。その場合は特に、原文の息づかいを活かさなければわざわざ翻訳する意味が半減してしまいます。先だって共訳に参加した “An Ear to the Ground”という本は、気さくな語り口でガーデニングの極意を著したものでした。専門用語は多いものの対象はあくまでも一般読者で、最大の特色は自然への愛情あふれる文章。「原文に忠実に」の重要性を再認識しました。

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○ 翻訳者として

学習の過程でさまざまな英文や翻訳論に触れ、なぜ翻訳するのか、何を翻訳したいのかということを考えさせられました。最近は、外国人が日本をどう見ているのかを紹介することで、日本人に日本の良さを再確認してもらいたいという思いが強くなってきました。

書店には、海外の生活文化や考え方を紹介し、なぜ日本人はそうしないのかと疑問を投げかける書物が並んでいます。それらにも一理ありますが、同時に今の私には、外ばかり見て自国を卑下するのは謙虚を通り越してあまりに自虐的に思えてしまいます。日本人はもっと日本好きであってもいいのではないでしょうか?私自身、児童期の海外経験から長らく日本を好きになれず、欧米の環境や価値観のほうが優れているという錯覚を抱き続けていました。ところが翻訳を学習するうちに、次第にその思い込みから開放されていきました。翻訳は英語と日本語を対比させる作業の連続です。その作業を通じて日本語の表現とはなんと豊かなのだろうと感心し、そのような言語を生み出した日本の風土や気風に思いを馳せるようになったのです。

○ 翻訳者をこころざす皆さんへ

あまり着々とは学習を進めてこられなかった私ですが、なんとか修了作品に取り掛かれる段階までたどり着き、今はただただこれまでの成果を形にしたいという気持ちです。翻訳学習を通じて、翻訳術、英語、自分自身、仕事の進め方などについて、幾多の思わぬ発見に出会い、それらは確実に私の財産となり、自信にもつながっています。ぜひ一人でも多くの方に、一つでも多くの発見の喜びを積み重ねていっていただきたいと思います。