『翻訳者の視野 ―「翻訳のすすめ」を考えるにあたって』

米国翻訳専門職大学院(USA)副学長 堀田都茂樹

胎児がたどる38億年の進化

「赤ちゃんは38億年にわたる生物の進化の壮大なドラマを経験しています。最初は魚に
似た形のものが、両生類から、爬虫類のような形になり、哺乳類の特徴が出てきて、だんだん人間に進化していく。

地球の生命誕生の瞬間から今日にいたるまでの生命の歴史をわずか38週で駆け抜けて行くのです。

つまり、妊娠中のお母さんの1週間が一億年、一日が1,000万年以上にあたります。

生まれた赤ちゃんは0歳でも1歳でもなく、38億歳といってもいい。生物の奇跡的な進化の歴史の結晶であり、両生類でも爬虫類でもなく、無事に人間として生まれてくるというのは、考えれば考えるほど不思議なことです。

なぜ、こんなすごいことができるのか。それは受精卵という生命の原初のころから、それを可能にするための情報が体内に存在しているからです。その情報の源が、遺伝子です。」

これは、遺伝子研究の権威、筑波大学名誉教授村上和雄さんの人体という小宇宙の
フラクタル構造を表したことばです。

翻訳者の視野、と題して、急に、なぜそんなことを言い出すのか、と言われる方もいらっしゃるかと思いますが。

宇宙の森羅万象が、フラクタル構造をもっていることはご存じでしたでしょうか。

リアス式海岸線や人間の腸の内壁などに共通する「図形の部分を拡大すると、全体と相似する形を見つけられる」という構造をフラクタルと言います。どんなに微小な部分を取っても全体に相似している自己相似。現在の先端科学、 複雑系の科学において、従来の線形科学ではとらえられなかった分野の科学のキーワードになっている言葉です。

一方で、我々翻訳者が扱う、文化、文明の所産は、こうした遺伝子レベルの目に見えない力が介在してはいないのでしょうか。

それが、今回のテーマです。

歴史とは、偶発的に起こった事象の集合体であると誰しも信じていると思いますが。

歴史もひとつの生命現象であり、文明には大きな波があり、 東洋と西洋、ふたつの大きな文明が描く波は、 生命情報を蓄えるDNAと同じ二重螺旋の構造をしている、と喝破した人物、故村山節(みさお)さんをご存知ですか。

私も、数年前、経済ジャーナリストの浅井隆さんの、この「歴史の800年周期説」を題材にした原稿 「HUMAN DESTINY 」(人類の運命、西宮久雄&Peter Skaer共訳、 KAIENTAI出版) をバベルで翻訳してその全貌を知りました。

それ以前も村山節(みさお)さんについては故船井幸雄さんが講演会で話題にされたりしていましたが、へぇー、ぐらいの関心でした。その後、調べると、あの文明の衝突の著者サミュエル・ハンチントンをはじめ多くの西欧の歴史家が検証し、その事実を認めたと言われています。
あのトインビーも歴史の800年の転換までは信じていたようです。

村山節(みさお)さんは1938年、『歴史は直線の分析より始まる』という天の声を聞き、
家の廊下に紙をつなぎ合わせ10mの年表を作り、そこに10年1㎝の座標をとり、歴史上の出来事を色分けして記述したそうです。

すると文明は大きなかたまりをなしており、西と東の文明が交互に興っていて、800年に1度、文明の大崩壊を起こしている、ということを発見したそうです。

これを文明法則史学と言うそうですが、 東西文明は800年サイクルで盛衰を繰り返しており、 2000年からの800年はちょうど西洋から東洋へ文明が移行する転換期であると言います。

地球上では、北半球が春の時は、南半球は秋、北半球が夏の時は、南半球は冬、
北と南の季節の移ろいは、一年周期で互いに二重らせんを描いています。

一方、文明は東と西で800年周期の二重らせんです。

DNAの二重らせんは三次元空間に、季節や歴史の二重らせんは時空に座標を取って表現されます。

二重らせんは生命の「形」であり、「法則」であると言われています。

そしてその法則性は、時間、空間の概念を越え、 宇宙のあらゆるところにフラクタル構造を持ち存在しているようです。

故村山節(みさお)さんが、膨大なデータを元に壮大な実証科学として提唱した、
DNAの二重螺旋構造にも相似する東西文明800年周期交代説。

歴史は無機的な線形の進化と思っていましたが、歴史に一種生命が宿っていることを知り、翻訳に関わるものとしてもその価値観が大きく変わる衝撃を受けました。

この説の存在を知るにつれ、翻訳者が文化、文明の東西交流を担っているとすれば、その果たす役割の重さに襟を正さざるをえないと思うようになりました。
とは言え、翻訳者の日常からはかけ離れた視点なので、身に引き寄せて、想いを馳せるのは決して易しいことではないでしょうが、こうしたことを受け入れる懐の広さと深さも翻訳者の適性のひとつかもしれません。

(参考です)
村山節著「文明の研究―歴史の法則と未来予測」(光村推古書院)は復刊ドットコムで手に入るようです。また、村山節さんの遺志を継いでいる林英臣さんが「超文明論―地球を救う座標軸」(総合法令)を刊行されています。

 WEB TPT 2014年5月10日号 ― 通巻102号より

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