グローバル翻訳市場の実情 第2回 日本語関連のグローバル翻訳市場はどこにあるか?

米国翻訳専門職大学院(USA)副学長 堀田都茂樹

グローバル翻訳市場で日本語関連の実務翻訳の仕事を得るにはどうすればよいでしょうか?まず、世界のどの地域の翻訳会社が日本語関連の仕事を募集しているのかを知らなければなりません。現在、日本を別にすれば、日本語の翻訳を取り扱うグローバル翻訳市場は大きく3つに分けられます。

1つ目がシンガポールを中心とするアジア・太平洋地区、2つ目が英国を中心とするヨーロッパ、そして3つ目が米国を中心とする北米です。この3カ国では、英語が母国語あるいは公用語です。シンガポール、英国のロンドン、米国の大都市には世界の大企業が地域本部や支店を構えており、企業の経済活動が活発に行われているため、この3カ国には多数の翻訳会社があります。

 
 アジア・太平洋地区では、シンガポールを中心に英語圏の香港とインド、中国、マレーシア、タイ、ベトナムなどにも翻訳会社のネットワークが広がりをみせています。ヨーロッパでは、英国を含むEU圏と西ヨーロッパ、チェコ、そして中東のトルコなどです。北米は米国とカナダが中心ですが、南米のアルゼンチンなどの翻訳会社の募集もときどきみかけます。 第1回の「グローバル翻訳市場の特徴」でおわかりのように、グローバル市場の翻訳会社は一般に英語から複数言語への翻訳を取り扱っていますが、それぞれの市場では、扱う言語の組み合わせが異なります。シンガポールを中心とするアジア・太平洋地区では、日本語、中国語(簡体字(中国大陸)、繁体字(台湾))、韓国語を中心としたアジア言語、英国を中心とするヨーロッパ市場ではヨーロッパの主要言語(ドイツ語、フランス語、スペイン語、イタリア語、ポルトガル語)とアジア・中東の主要言語(日本語、中国語、アラビア語など)、北米市場ではヨーロッパの主要言語とアジア言語の組み合わせを取り扱うことが多くなっています。日本語関連の案件は幸いどこの市場でも取り扱っていますので、時差の問題をクリアすればどこの市場とでも取引が可能です。

 翻訳会社のクライアント(翻訳の発注元)もそれぞれの市場で異なります。まず、アジア・太平洋地区では、シンガポールや香港にアジア本部や支店を開設している多国籍企業、ヨーロッパではヨーロッパや米国に本社がある多国籍企業、そして北米では米国に本社がある多国籍企業です。ただし、企業の規模が大きくなると全世界に企業の拠点を設けているため、たとえば、アジアと北米の翻訳会社から同一企業の別の部門の仕事を発注するということもあります。

今までに挙げた特徴を表にすると、以下のようになります。

市場 アジア・太平洋 ヨーロッパ 北米
主な国、()は今後増加が予想される シンガポール、香港、インド、中国(マレーシア、タイ、ベトナム) EU圏、EU以外の西ヨーロッパ、(チェコ、トルコ) 米国、カナダ(アルゼンチンなど南米)
取り扱い言語 アジア言語(日本語、中国語(簡体字(中国大陸)、繁体字(台湾))、韓国語 ヨーロッパの主要言語(ドイツ語、フランス語、スペイン語、イタリア語、ポルトガル語)、アジア・中東の主要言語(日本語、中国語、アラビア語など) ヨーロッパの主要言語とアジア言語の組み合わせ
クライアント(翻訳の発注元) シンガポールや香港にアジア本部や支店を開設している多国籍企業 ヨーロッパや米国に本社がある多国籍企業 米国に本社がある多国籍企業

 上の表をみると、日本語関連の翻訳が発生する国は、既に日本企業が進出して活発に事業を展開しているか、現在進出中でこれから事業活動を展開していく国々です。中でも日本語の翻訳案件が多いのは、アジア・太平洋地区のシンガポールです。シンガポールの翻訳会社はどこでも世界中の言語を取り扱っていますが、アジア言語の取り扱いが圧倒的に多く、なかでも日本語の案件はアジア言語全体の3-4割を占めるといわれています。この他に、インドや中国の翻訳会社でもかなりの量の日本語案件を取り扱っています。一方、ヨーロッパの翻訳会社の取り扱い言語はEU圏の23言語が中心で、日本語案件はどちらかというと少ない方に入ります。米国の翻訳会社では、日本語案件を積極的に取り扱っているところと、そうではないところがあるようです。日本語案件を取り扱っているかどうかは、翻訳会社のウェブサイトで確認します。日本語版のウェブサイトがある翻訳会社では、かなりの日本語案件を取り扱っているとみてよいでしょう。

 上記に挙げた国の翻訳会社は、所在地とは別の国に対して翻訳者を募集している例です。海外にお住まいの方は、その国が観光国だったり、日本企業が進出している場合は、居住国の翻訳会社でも翻訳案件が結構見つかるかもしれません。私はトルコに住んで22年になりますが、翻訳を始めた15年ほど前は、トルコの翻訳会社からは個人的な手紙だとか、観光地のパンフレットなどしか需要がありませんでした。経済が発展を始めた10年ほど前からリーマンショックの前までは、1年間に合計1万ワード程度のトルコ語の案件を受注していました。リーマンショック後昨年末までは、トルコ語の案件の需要はほとんどありませんでした。ところが、昨年10月に安部首相が経済界の重鎮を引き連れて経済外交を行なった後、1カ月に一回程度問い合わせがくるようになりました。そして、ここ2カ月で日本とトルコの4社から問い合わせがあり、そのうちトルコの2社から3件、合わせて2万ワード強の案件を受注しています。実務翻訳は、日本との経済の結びつきに左右される部分が大きいという一例です。

The Professional Translator 8月10日号より
http://e-trans.d2.r-cms.jp/

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