バベル翻訳大学院(USA)と私

修了生 ハクセヴェルひろ子
修了生 ハクセヴェルひろ子
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 通常の教育を受けた人ならば、最低一ヶ国語の読み書きができます。まして、それに英語の能力が加われば、翻訳など簡単にできるに違いないと思っても不思議ではありません。かつて、私もその中の一人でした。しかし、その考えが間違っていることに気づくのにそれほど時間はかかりませんでした。今から9年前、私はバベルの通信教育を1年受けたあと英日翻訳者として歩み出し、英国の翻訳会社に登録して仕事を受けるようになりました。ところが、日本語が滑らかに書けず、しかも自分の翻訳スタイルが文章の目的に合っているのかという不安が常につきまとい、訳文に自信が持てませんでした。もっと修行を積まなければ、しかし、どうすればよいのか。その答が見つからないまま1年ほど経った頃、バベルのウェブサイトでバベル翻訳大学院 (PST) の記事を見つけ、その時に募集していた海外特別奨学生に迷わず応募しました。
 幸いにも合格の通知をいただき、早速受講を始めました。驚いたのは、1年間の通信教育とは比べ物にならないほどの膨大な教材と提出課題です。1年次は原書と訳書をひたすら読み比べ、課題の材料を探す日々が続きました。2年次は、専門技術の習得に加え、自分で選んだ本を1冊訳すという厳しい修行が続きました。その間に翻訳の仕事も続けていたため、3年で修了する予定が4年かかりました。
 PSTでの最大の収穫は、翻訳技術を総合的に学べたことです。ある分野の翻訳者を目指す場合、その分野の翻訳技術だけ勉強すればいいという考えはもう古いと思います。翻訳すべき文書は、私が翻訳を始めた頃とは違い、非常に高度にしかも複雑になっており、ひとつの文書がいくつもの分野にまたがることが当たり前となっています。たとえば、ウェブサイトの翻訳で必要な能力は、商品知識の習得(検索能力)、法的文書(ご利用条件/プライバシーポリシーなど)の翻訳力、消費者にアピールする文章を書く能力、ウェブサイトを構成するタグの知識、翻訳支援ツールの操作など複雑な要素がからみあっています。PSTでは、こうした技術を体系的に習得することが可能です。また、翻訳の仕事に対して自信を持てるようになったことも大きな収穫です。修了後急に忙しくなって仕事が重なったときは、本当に全部こなせるか不安に襲われることが何度もありましたが、あれだけの修行を積んできたのだからきっと乗り越えられるはず、と自らの能力を信じることができました。
 PSTで修士号を取得した後の最大の目標は、「仕事の途切れない翻訳者になる」ことでしたが、修了してから数社の翻訳会社との取引に恵まれ、1年もしないうちにその目標に到達することができました。現在は、翻訳を提供するだけではなく、トライアルの採点や翻訳チームを結成して大量翻訳に協力することなども行っています。先月、大量の日英翻訳の依頼に対してPST生と修了生を対象に選別を行い、6名が某翻訳会社で日英翻訳者としてデビューしました。こうした要請に対して直ちに対処できるのも、PSTのレベルの高さを物語っていると思います。
 翻訳修士号の取得は、翻訳という仕事をしていくための選択肢のひとつですが、学歴が重視されるヨーロッパでは一考する価値があると思います。

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