「翻訳専門技能者」に必須の技術を、翻訳実務内容を精密に分析し、導き出したのが「翻訳専門技能習得のための5つのCompetence」です。それぞれのCompetenceを体系的に習得し、それを統合させることにより、グローバルなマーケットで活躍する「翻訳専門技能者」に必須の技術を効率的に習得することができます。
1. Language Competence
翻訳者が第一に習得しなければならないのが、言語に関する能力です。ソース言語(翻訳前の言語・英日翻訳の場合は英語)の読解力、ターゲット言語(翻訳後の言語・英日翻訳の場合は日本語)の読解力、翻訳変換力(分かりやすい表現、ジャンルに特有の表現形式に変換する能力=「バベルの翻訳文法」)、そして文体・表現技法等々に関する技術習得がその内容です。特にすべての商品としてのドキュメンテーションには、読者、読み手がいます。これらの対象に即した翻訳は、「翻訳専門技能者」に欠かせない視点です。
2. Cultural Competence
翻訳は、単に表面的に英語を日本語に置き換えるだけの技術ではありません。原著者が意図していることを、対象とする読者が理解できる内容でなければなりません。そのためには原著者の文化的背景を無視することは出来ませんし、一方、読み手の文化的な背景もおさえておく必要があります。これら原著者並びに読者の文化的背景を理解する能力の取得がテーマとなります。
3. Expert Competence
翻訳は、グローバル化する全ての産業界に必要です。それぞれのジャンルに必須の知識が「翻訳専門技術者」には自ら必要となります。重要なことを、「専門用語」を丸暗記することではなく、必要とする専門知識をどのようにリサーチし、要求される「納期」に商品として納品するかの技術が必要です。これらの技術を習得することがテーマです。
4. IT Competence
翻訳実務の世界ではすでにインターネットを介して実務が行われていますので、これからの「翻訳専門技術者」には、IT Competenceが必須です。単にWordやExcelのコンピュータソフトが使えるだけでなく、翻訳支援ソフト、エディティング技術、自己を社会にアピールするためのWebページの作成技術やインターネット上でグループ翻訳をする際のコミュニケーション技術など多岐にわたります。
5. Managerial Competence
「翻訳専門技術者」の最終型を「独立開業」とするならば、当然、経営に関する能力が「翻訳専門技術者」には必要です。もちろん、すでに多くの翻訳実務の世界では、単一の翻訳者が翻訳する形式より、プロジェクト翻訳のスタイルが出版翻訳の世界などでも大勢となっています。これを効率的に運営するコーディネート能力が必要です。また、自分をプロフェッショナルとして社会にアピールするための、マーケティング力、プレゼンテーション力などがこれからの「翻訳専門技術者」にはますます重要となります。