NEW! ギグ・エコノミー時代、Professional Translatorに求められる「プロフェショナルブランディング」

米国翻訳専門職大学院(USA)副学長 堀田都茂樹

「ギグ(gig)」とは、元々はジャズやロックなどで、即興でミュージシャン同士が、音合わせを兼ねて、その場限りの演奏をやってみることを意味し、それが転じて、「単発の仕事」という意味で広く使われるようになったそうです。

Definition of the Gig Economy
The term “gig economy” refers to a general workforce environment in which short-term engagements, temporary contracts, and independent contracting is commonplace. It’s also referred to as the “freelancer economy,” “agile workforce,” “sharing economy,” or “independent workforce.” You might think it’s a buzzword, and you’d be right, but the widespread growth of startups supporting the gig economy (and the number of workers leveraging them) are a sure indication that the nature of work as we know it is changing.

Studies estimate that by the year 2020, 43 percent of the American workforce will consist of independent contractors. With digitization and automation threatening some traditional jobs, the freelance economy can provide job security, but not in the traditional sense.

In the freelance economy, workers operate as independent contractors, meaning their clients pay them an agreed-upon rate for services rendered. In an independent contracting arrangement, workers are responsible for saving and paying their own taxes and aren’t eligible for the typical benefits of full-time employment such as access to group health insurance or retirement investments and savings accounts. But thanks to the rise of the independent workforce, benefits such as health insurance coverage, independent retirement accounts (IRAs), and liability and accident insurance are more accessible than ever before. Plus, workers operating as independent contractors get to take advantage of the tax benefits of operating their own business, including tax deductions for non-reimbursed operating expenses such as travel, supplies, and the like. 
(Angela Stringfellow A writer focusing on news, trends, and insights in marketing, business, and technology)

企業や組織に属さず、ネットを通じて個人で単発の仕事をとる働き方が広がっています。IT関連業務に限らず、翻訳やマーケティング、法務、会計、コンサルティングなど職種も多様になってきました。AIの発達でさまざまな仕事が消えていくなか、国境を越えてオンラインで人々が仕事を取り合う「フリーランス」の時代になるのでしょうか。

「アップワーク」 や「リンクトイン・プロファインダー」 といった数多くのギグエコノミーサービスで紹介される仕事を好きなように組み合わせられるということでもあります。

マッキンゼーの調査によれば、米国と欧州連合(EU)各国では約6400万人が、必要に迫られてではなく自らの選択で、本業に加えてこうしたギグワークを請け負っていると言います。

また、米国Intuitの調査によると、2020年までにアメリカ人労働者の43%がフリーエージェントとしての独立請負業者になると予測されています。また、オックスフォード大学のインターネット研究所が2017年7月に発表したレポートでは、すでに過去1年間で26%も拡大したことが報告されています。

マスコミでは、国境越えて仕事を奪い合う時代が来るのか 、と騒ぎ立てているようですが、
そのようなネガティブにとらえるのはマスコミの得意技、むしろポジティブにとらえるべきと考えます。

しかし、こうした国を超えた人材の自由な移動は、一見、移民と同一視されがちですが、国のアイデンティティ喪失につながる危険な移民受け入れとは根底が違うと理解すべきと考えます。移民政策はその国固有の文化を守るという立場からも安易にすべきでないと信じます。

ちなみに、実態は、日本への流入者は前年比約5万5,000人増の39万人1,000人。ドイツ(約201万6,000人)、米国(約105万1,000人)、英国(47万9,000人)に次ぐ、堂々の4位だそうです(OECD加盟35カ国中)。他の先進国が移民受け入れで国が破壊されるなか、政策を転換しているなか我が国は何を考えてこれを進めようとしているのでしょうか。

この稿では、ギグ・エコノミーの時代、ネット上で国を越えて働くクラウドワーカーの中でも古い職種であるプロフェショナルトランスレータを考えてみたいと思います

翻って、プロフッションとは英語のprofessを語源としていることはご存知でしょう。Professとは神の前で宣言する、という意味をもち、中世ヨーロッパでは神の前に誓いを立てて従事する職業として、神父、医師、法律家、会計士、教師等の専門家を指していました。彼らは職業を通して神、社会に対して責任を負うという厳しい倫理観で自らを律していたと言います。

参考までに、プロフェッションならびにプロフェッショナルの概念については様々な定義がありますがその一つを紹介しますと、

① 専門的知識・技術に基づく仕事に従事していること 
② その知識や技術は,一定の外部汎用性を備えたものでなければならない 
③ 外部に専門家団体もしくは専門家社会が存在し,何らかの形で能力その他を評価するシステムが備わっている。また、 これらの能力的及び倫理的基準を維持することを主目的とした職業団体が存在していること 

プロフェショナリズムを重んじる翻訳の各国の団体、私の関わる日本のJTA( Japan Translation Association)、アメリカのATA(American Translators Association)、イギリスのITI(Institute of Translators and Interpreters)、オーストラリアのNAATI(National Accreditation Authority for Translators and Interpreters) 等はその倫理基準を明示しています。

私としてはこの辺を踏まえて、Professional Translatorとしては一定の矜持をもってクラウドワーキングをしてもらいたいと考えます。それには、まずは翻訳者としてのプロフェショナルブランディングを創りあげることから全てが始まります。

翻訳者として自信をもって臨めるどの分野を専門としたいのか。また、それをどう発展させていきたいのか、自分のプロフェションのドメインを確立することが重要です。そして、その社会的役割を深く認識することが必要と考えます。

そのうえで、方法として、個人事業主としてスタートするのか、株式会社としてスタートするのかを決めることになります。言うまでもない事ですが、法人組織としてスタートするメリットは、営業のしやすさ、言い換えれば経験証明となること、税務のメリットがあること。また、重要なのは有限責任であることはご存知の通りです。

こうして翻訳者としてのプロフェショナリズムを胸に、仕事に臨んでもらいたいと考えます。

日本でも、ウーバーWeWorkなども上陸し、新しい働き方の認識は着々と進んできていると言えます。しかし実態は、やっと副業・兼業という働き方が容認される環境になってきたという状況でしょう。政府主導ながら「働き方改革」推進のおかげで、テレワークを実施する企業がようやく増えつつある段階のようです。

しかし、ギグ・エコノミーの労働市場が国内に限定されることのない幅広い人材の選択を可能にしているとすれば、日本国内の法制度や働き方の環境がまだ整っていないことは、むしろグローバルのギグワーカーの活用を推進させることになるかもしれません。

いずれにせよ、始まっているギグ・エコノミーの時代。先発組のProfessional Translatorとしては高度な自己マネジメント、プロフェショナルブランディングが求められる時代に入っているのでしょう。